IT人材がなぜ不足している?ニーズの高い職種や求められる人材とは?
2023.08.17
2023年2023年現在、IT人材が非常に不足していることをご存じですか?
通信販売や動画配信、福祉サービスにいたるまで、今やありとあらゆるサービスがインターネットを介して提供されています。
このような状況下でIT人材の不足が続けば、徐々に社会が回らなくなっていくことは想像に難くないでしょう。
本記事ではそんなIT業界について、人手が不足している理由や職種、および今後求められるIT人材について解説します。
IT業界への転職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
経済産業省のデータでは2030年時点で約80万人もIT人材が不足する
過去に経済産業省が行った調査では、IT人材が2019年から減少に転じ、2030年には40〜80万人規模の人材不足が生じると予測されています。
また2016年時点で、日本の「ITスキル標準レベル」の平均値は3.17であり、これはアメリカ(4.05)や中国(3.58)よりも大幅に低い数字です。
このように、日本のIT人材は、質的にも人数的にも必要な水準を満たしていません。
このままでは、最新のIT技術を満足に扱えない会社が増え、様々な業界でセキュリティトラブルなどの問題が多発するようになるでしょう。
IT人材が不足している理由は、需要が増えているのに人手が減っているから
IT人材が不足している理由は、一言でいえば「需要に供給が追いついていない」という状態です。
昨今のIT業界は、求められる技術レベルが年々上がっているうえ、事業そのものも非常に多様化してきています。
それにも関わらず、生産年齢人口は減少の一途をたどっており、IT業界の人手不足が解消される兆しは現状ありません。
それでは、IT人材が不足している理由について、もう少し詳しく見ていきましょう。
生産年齢人口が10年で約600万人減少
IT人材が十分に供給されない理由その1は、就労人口そのものの減少です。
内閣府の発表によれば、2019年時点で生産年齢(15〜64歳)人口は約7,507万人で、これは2010年時点より600万人近く少ない数字です。
そして『国立社会保障・人口問題研究所』の調査によると、この生産年齢人口が、2030年には約6,875万人まで減少すると推測されています。
平成以降の出生率が、人口維持の基準となる2.06〜2.07に一度として達していない事実から見ても、生産年齢人口が調査通りの下り坂をたどっていることは間違いないでしょう。
IT需要が2018年~2020年の2年で約20万人増加
IT人材が不足する理由その2は、IT需要が年々増加の一途をたどっているという点です。
特に令和以降、テレワークの普及や行政手続きのオンライン化など、IT産業を多様化させる要因が多々生まれました。
経済産業省の報告によれば、2020年のIT人材需要は約129万人で、2018年(約109万人)から2年で20万人も増加しています。
これが2030年には164万人に達すると予測されており、このままでは多くの会社が、今ある情報システムを維持しきれなくなることでしょう。
IT技術の進歩
IT人材が不足する理由その3は、IT技術の進歩です。
人工知能(AI)やIoT(インターネット・オブ・シングス)といった高度なITサービスが近年急速に普及していることに加え、スマホ人口やSNSユーザーの増加に伴うオンラインサービスの開発競争も年々激化しています。
そのぶん、求められる人材のレベルも年々上がってきており、ただでさえ少ない人材をさらに厳選しなければならないのがIT業界の現状です。
未経験からIT業界への転職を目指す場合は、ヒューマンスキルの部分で多大なアピールが必要となるでしょう。
今後ニーズの高いIT系職種5選
ここでは多種多様なIT系職種のうち、今後ますますニーズが高まるであろう役職を5種類紹介します。IT業界への転職を考えている方は、ぜひ以下の職種を検討してみてください。
データサイエンティスト
データサイエンティストとは、ビッグデータの収集・分析を通じて経営課題の解決策を策定する役職です。
仕事の流れは一般的なマーケティング業務とさして変わらないものの、データベースの構築にSQLやHadoop(ハドゥープ)といった管理ソフトの運用技術を要することから、多くのIT企業で人材が不足しています。
とりわけウェブサイト運営やアプリケーション開発など、ユーザーの行動データが経営戦略に直結する業種においては、データサイエンティストの存在が大いに歓迎されることでしょう。
確率統計やプログラミング言語といった多様な知識が求められるので、他職種からの転身を考えている方は、IT専門学校に入るなどして十分な勉強時間を確保するよう心がけてください。
セキュリティエンジニア
セキュリティエンジニアとは、企業ネットワークを保護するためのセキュリティシステムを開発・運用する役職です。
ウイルスの種類やサイバー攻撃の手口が年々多様化していく中、顧客情報や社内機密を保護する専門家として、セキュリティエンジニアの需要が近年急速に高まっています。
ただ専門家といっても、IAMやキャスビー(CASB)といったセキュリティ技術の専門知識だけでは務まりません。
システム開発自体はハードウェアの設置から始まるため、一般的なSEと同じくインターネットに関する幅広い知識が必要です。
ただ逆にいえば、SEとして一定の実務経験がある人にとって、セキュリティエンジニアは比較的スムーズに挑戦できる職種といえるでしょう。
プロジェクトマネージャー(PM)
プロジェクトマネージャーは、システム開発などに関わるプロジェクトチームを編成・指揮する役職です。
具体的には人員確保や工数の割り当てといった作業に始まり、プロジェクト開始後は主に進捗管理や対外業務を担うことになります。
また大元の企画立案、それに応じた予算やスケジュールの設定などもプロジェクトマネージャーの業務範囲です。
取り立てて専門知識の類を必要としない一方、マネジメントスキルや情報収集力といった幅広い資質が求められるため、人材の供給はそう多くありません。
開発チームのリーダー経験などがあり、より大きな組織を指揮してみたいと考えている方は、ぜひプロジェクトマネージャーという仕事に挑戦してみてください。
IoTエンジニア
IoT(インターネット・オブ・シングス)とは、身近な機械をインターネットに繋げる技術を指す用語です。
分かりやすい例としては、電源のオンオフなどをスマートフォンで遠隔操作できる「スマート家電」、車が歩行者などを検知して自動でブレーキをかける「衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)」といった技術が挙げられます。
これらのシステムを開発・運用するには、IT分野のみならず機械制御の知識も必要です。
また、IoTには5G回線をはじめとしたリアルタイムの高速通信を要するため、ネットワークやセキュリティに関する知識も欠かせません。
これらの事情から、IoTエンジニアはIT職の中でも特に人材が乏しく、かつ採用のハードルも高い職種となっています。
これからIoTエンジニアを目指す方は、IoT検定やES(エンベッドシステム)スペシャリスト試験といった専門資格の勉強からはじめてみてください。
クラウドエンジニア
クラウドコンピューティングとは、サーバーやストレージといったITインフラをネットワーク上に設置し、それらをユーザーにリアルタイムで提供する技術を指します。
そして、クラウド上でシステムの開発・運用を行うのがクラウドエンジニアの仕事です。
クラウドエンジニアになるには、多くのクラウドサービスの基盤となるリナックス(Linux)の運用技術に加え、アマゾンウェブサービス(Aws)をはじめとしたパブリッククラウドの知識も網羅している必要があります。
ただ、ハードウェアの設置作業を一通り省けるなど、一般的なシステム開発に比べて楽をできる部分も少なくありません。
Awsに関しては専門資格が3種類もあるので、クラウドエンジニアに興味のある方はまずそちらから挑戦してみてください。
求められているIT人材とは
ここまで、様々なIT専門職の人材が不足しているということを解説してきました。
いずれの職種も専門知識やヒューマンスキルが高いレベルで求められるため、「とにかく人手を集めよう」というわけにもいきません。
では具体的にいま、どのような人材がIT業界に求められているのでしょうか?
以下で詳しく見ていきましょう。
コミュニケーションスキルが重要
専門職といえど、仕事内容の根幹は「顧客の課題を解決し、信頼関係を築くこと」です。
そのため、IT業務にはヒアリング力やプレゼンテーション力など、多様なコミュニケーション能力が求められます。
プロジェクトマネージャーのような、開発チームを統括する立場であれば、モチベートやマネジメントといった人を導く能力も欠かせません。
こうしたスキルは日々の仕事でしか身につかないので、まずは今いる職場で、法人顧客やプロジェクトチームを任される立場になるよう精進してください。
先端IT技術の知識がある
IT専門職に就く以上は、先端IT技術の知識も当然必要です。
データサイエンティストを目指すならSQLやHadoop、クラウドエンジニアを目指すならLinuxやAwsといった具合に、目指す職種によって学ぶべき専門知識は異なります。
ただ、ITの各種専門領域には、必ずといっていいほど資格制度が存在します。
そのため、資格の勉強に充てる時間さえあれば、異業種で働きながらでも先端IT技術の知識を身につけることは十分可能です。
情報セキュリティに精通している
情報セキュリティに関する知識は、セキュリティエンジニア以外のIT専門職においても例外なく必要です。
実際、膨大な数の個人情報を取り扱うデータサイエンティストや、ネットワークを一から構築・運用するIoTエンジニアなど、先ほど紹介した全ての職種がセキュリティに関する重大な責任を担っています。
ITについて専門的な勉強をはじめる際は、まずIAMやキャスビー(CASB)などのセキュリティ領域から触れておくといいでしょう。
IT系の職種への転職前に知っておくべきこと
IT企業の中には、オン・ザ・ジョブトレーニング(OJT)制度などを用意し、未経験者を積極的に受け入れているところも多く存在します。
そのため、IT業界へ転職することそれ自体は、専門的な知識や資格を必ずしも必要とするものではありません。
前提として求められる資質は、各技術の最新仕様に常日頃からアンテナを張る学習意欲、そして日々変化する業務内容にその都度対応していける柔軟性です。
この2つが自分に備わっていると言い切れるのなら、ぜひ自信をもって、興味のあるIT系職種にチャレンジしてみてください。
まとめ
以上、人材が特に求められているIT専門職、およびそこに転職するために必要な能力などを解説しました。
IT業界はいま、技術の発展や業種の多様化により、人材が質的にも量的にも不足している状態です。
あなたがIT専門職を真剣に目指してくれるのであれば、それだけで業界にとって貴重な存在になることは間違いありません。