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ITのエントリーレベルはどのくらい?おすすめの職種や応募の際に知っておくべきこと

2023.08.16

IT業界を目指すにあたっては、自分の知識レベルをつねに把握しながら学習を進めていくことが大切です。
レベルを測る手段といえば、多くの人は資格試験をイメージするでしょう。
しかし、資格試験を受けても、公表されるのは試験の合否だけであり、具体的な習熟度までは分かりません。
そこで役に立つのが、ITSSと呼ばれるITスキルの指標です。
今回はITSSのうち、エントリーレベルと呼ばれる区分について、大まかな人物像やおすすめの職種を解説します。
IT業界への転職を目指している人は、ぜひ参考にしてみてください。

ITのエントリーレベルとはどのくらい?

ITスキルを評価する指標として、ITスキル標準(IT Skill Standard)が存在します。

そしてITのエントリーレベルとは、ITスキル標準の7段階評価のうち、レベル1〜2に該当する評価です。

以下で詳しく見ていきましょう。

ITのエントリーレベルはITSSのレベル1~2

ITSSの評価値は7段階のレベルに分かれており、このうちレベル1とレベル2が、まとめてエントリーレベルとして扱われます。
レベル1には、新入社員をはじめとしたIT業務未経験者が該当します。
このレベルの人材は、PCやネットワークの仕組みもよく分かっていないケースが多いため、日々の業務やスキルアップには上司の指導が欠かせません。
そして、レベル2には、指導の下である程度の業務をこなせる人材が該当します。
IPA(情報処理推進機構)の定義上は一段上のミドルレベルに分類されていますが、上司の指導が欠かせない時点で、現場での扱いはエントリーレベルと変わりません。
要求された作業全てを独力で遂行できるようになって、はじめてエントリーレベルを卒業できるものと考えておきましょう。

ITSS(ITスキル標準)とは?

ITSSとは、ITスキル標準(IT Skill Standard)の略称です。
高度IT人材を育成するべく、経済産業省によって2002年に制定されました。
ITSSでは、アプリケーションやソフトウェアなど11の職種について、それぞれの技術レベルを7段階で評価していきます。
この評価方式のメリットは、当該人材の保有スキルを厳密に可視化できること、および今後指導を必要とする苦手分野がひと目で分かる点です。
新人教育や人事考課にITSSを活用する企業は、今後ますます増えていくことでしょう。

ITSSの7段階のレベル評価

ITSSのエントリーレベル(レベル1〜2)は、業務をこなすうえで上司の指導を必須とする段階です。
これがミドルレベル(レベル3)に上がると、ようやく一人前のIT人材として評価されるようになります。
とはいえ、レベル3程度ではまだ、課題解決や技術開発をリードする地位には立てません。
ハイレベル(レベル4〜5)に達することで、ようやく諸々のプロジェクトを先導できるようになります。
なお、最高評価のスーパーハイレベル(レベル6〜7)に認定されるのは、市場全体に影響を及ぼすような一握りの人材だけです。
エントリーレベルに該当する人は、ひとまずハイレベルを目標に、日々研鑽を積んでいってください。

ITSSエントリーレベルの人におすすめの資格

ITSSエントリーレベルの人は、ITについて1から学んでいく必要があります。
資格に関しても、ITパスポートや基本情報技術者など、基礎知識だけで十分に合格を狙えるものがおすすめです。
以下で詳しく見ていきましょう。

ITパスポート

ITパスポートは、IT分野において特に受験者数の多い資格です。(2022年度:約25万人)
全ての社会人、およびこれから社会人になる学生を対象としており、試験ではITや経営に関する基礎知識が広く問われます。
具体的な出題ジャンルは、「ストラテジ」「マネジメント」「テクノロジ」の3項目です。
ストラテジ項目では、主に経営戦略や業務プロセス管理、企業法務といった会社運営の根幹にあたる知識が問われます。
マネジメント項目に関しても、プロジェクト管理やシステム監査など、ビジネスの全体像に関する問題がメインです。
ネットワークやセキュリティといった具体的なIT知識は、基本的にテクノロジ項目でのみ問われます。
2022年度の合格率は約52%となっており、他のIT系資格に比べるとさほど高い壁ではありません。
しっかり勉強さえしておけば、IT初心者の人でも十分に一発合格を狙えるでしょう。

基本情報技術者試験

社会人を広く対象とするITパスポートに対し、基本情報技術者は純粋に、ITエンジニアやIT業界志望者のために用意された資格です。
試験ではITパスポートの出題範囲に加え、データベースやアルゴリズム、プログラミングなど多種多様な分野の知識が問われます。
基本と名のつく通り、どの分野においても、実務レベルの知識はさほど問われません。
とはいえ、必要な勉強量自体はITパスポートに比べてかなり増えるため、IT初心者が一発合格するのは中々難しいでしょう。
ただし、試験の難易度自体は、2023年4月の制度改正によって多少下がりました。
改正内容として特に大きいのは、難関といわれる午後試験において、長文問題およびプログラミング言語の個別選択がなくなった点です。
その結果、2022年度は平均約37%だった合格率が、2023年4月の時点で約56%にまで跳ね上がっています。
すでに基本情報技術者試験で失敗した経験がある人も、ぜひこの機会に再挑戦してみましょう。

応用情報技術者試験

応用情報技術者は、高度IT人材に必要な実践的技能が問われる資格です。
これを取得できれば、エントリーレベルは卒業したものと判断していいでしょう。
試験では基本情報技術者の出題範囲に加え、仮想化技術やオブジェクト指向分析など、それ単体で専門資格が存在するような分野も頻繁に取り上げられます。
また、基本情報技術者の方で廃止された長文問題が未だ健在なため、スムーズに解答を進めるためには読解力の鍛錬も欠かせません。
2023年度春期の合格率は約27%となっており、これは同時期の基本情報技術者試験に比べて半分以下の数字です。
IT初心者がいきなり試験を受けても、ほぼ確実に門前払いをくらうことでしょう。
応用情報技術者に関しては、ITパスポートや基本情報技術者の資格を予め取得し、基礎を固めたうえで挑戦するよう心がけてください。

ITSS準拠の民間資格

ここまで紹介した3つはいずれも国家資格であり、試験においてはIT分野の幅広い知識が問われます。
それに対し、ITSSに関連する民間資格の多くは、特定の技術や言語に特化した資格です。
代表例としては、データベースの専門資格であるオラクルマスター、ネットワークエンジニア向けのシスコ技術者認定などが挙げられます。
いずれも、取得しておけば国家資格同様、転職活動等で有利に働くので、興味のある人はぜひ挑戦してみてください。

経験のないエントリーレベルがITの職種に就くのは難しい?

ITエンジニアとして一人前の扱いを受けるには、それなりの専門知識や実務経験が必要になります。
ただ、IT業務の経験がまるでないからといって、IT企業への就職自体を諦める必要はありません。
ITパスポートの出題範囲を見れば分かるように、IT企業で求められる技能の多くは、企画力やマネジメント能力といったヒューマンスキルです。
そのため、今いる会社で十分な経験・実績を積んでいれば、IT経験がなくともヒューマンスキルの部分で評価してもらえます。
本気でIT業界を志望するのであれば、現状のITSSレベルはあまり気にせず、堂々と面接に臨みましょう。

ITエントリーレベルにおすすめの職種

最後に、エントリーレベル相当の人におすすめのIT職種を3つ紹介します。

テクニカルライター

テクニカルライターとは、取扱説明書をはじめとした技術系の文章を作成する仕事です。
基本的な文章能力さえあれば、IT知識に関してはその都度調べながらでも十分に務まります。
とはいえ、決して気楽な仕事ではありません。
説明書の不備は重大な事故につながるため、正確な情報を書くことはもちろん、消費者向けに分かりやすい文章を書くことも求められます。
実務をこなす中で順調にIT知識が身についていけば、やがては開発者向けのマニュアルなど、より高度な文章も任されるようになるでしょう。

ヘルプデスク

ヘルプデスクとは、製品やサービスの問い合わせ対応を担う仕事です。
電話やメール、HP内のチャットフォームなどで顧客と接し、1つ1つの質問に対してできるだけ迅速に返答することが求められます。
また、ヘルプデスクで顧客を満足させるには、声色や言葉遣いなどで如何にホスピタリティ(思いやりの気持ち)を演出できるかも重要です。
顧客対応を繰り返す中で徐々にIT知識が身についていけば、やがては社内トラブルへの対応など、会社の業績により直結する仕事も任されるようになるでしょう。

システム管理者

システム管理者とは、社内の業務システムを運用管理する仕事です。
社内SEとも呼ばれるこの仕事では、主にハードウェアの維持管理やソフトウェアの更新、セキュリティの診断といった業務を担います。
就職するうえで必須とされる資格は特にないものの、上司の指導なしで業務をこなすには、最低でもITパスポート相当の知識が必要です。
また、現場の声をもとに業務環境の改善を図るのもシステム管理者の仕事であり、これをこなすにはヒアリング力をはじめとしたヒューマンスキルが欠かせません。
システム管理者の多くは、やがて新人教育や社内ヘルプデスクも任されるようになるため、やりがいの部分で悩むことはまずないでしょう。

まとめ

以上、ITSS(ITスキル標準)の概要、およびエントリーレベルの人におすすめの資格や職種を紹介しました。
ビジネスマンとして十分なヒューマンスキルさえ備わっていれば、IT知識が乏しくとも、IT企業から内定を受ける見込みは十分にあります。
最後までお読みいただきありがとうございました。